娘が拒食症になりました⑥「拒食症は治らないよ!」医師に言われて言葉を失う
なぜ、なぜ、なぜ
当時2011年3月。
東日本大震災のニュースや映像をテレビで見ても、無表情。
感情が消えてしまったかのような表情、眼差し、声に胸騒ぎを感じました。
なにかがおかしい。
そう。思いました。
でも、それが何だかわからず、ザワザワとした不安がごちゃ混ぜになっていました。
そして、4月。
学校から呼び出され、保健室の先生から「拒食症ではないか?」と告げられました。
掛かりつけの小児科でも拒食症だと言われ、専門の病院を紹介されました。
専門の病院に予約を入れ、受診までの期間がとても長く感じられました。
その間の私は、「なぜ?なぜ?なぜ?」の自問自答の繰り返し。
出ない答えをグルグルと探し続け、無駄に時間を過ごすことしかできなかったように思います。
為すすべもなく時間ばかりが過ぎていく
小児医のご紹介のままに、病院を訪れました。
それは国立病院機構のひとつでした。
車で40分くらいだったかな。けっこう田舎にあった。
精神科ではありませんでした。
子どもの心のケアをメインにされている医師だと伺いました。
紹介してくださった掛かりつけ医の先生がおっしゃるには、
「他には思い当たらないほど、しっかりとみてくださる先生」
ということでした。
当初は週に1回ほどの通いで、面談を繰り返すという形でした。
面談と言っても、体重を測り
「食べれてる?」
「もう少し食べようね」
「◯◯kgになったら入院することになるからね」
これの繰り返し。
「こんなことで治るの?」と呆然としたのを、今でも覚えています。
何をしているんだろう…。
私が素人だから?
私が素人だからこの診療の意図がわからないの?
こんなことで本当に治るの?
もしかして、医師にも治せない?
時間の経過とともに「拒食症」という病気が、ますます得体の知れない恐怖となっていくばかりでした。
「病院にかかれば治るものだ」
「医者に診てもらえれば、すぐに治るんだ」
という私の甘い認識が崩れるのに、そう時間はかかりませんでした。
なのに、時間だけが無駄にすぎていく。
それが怖くてたまらなかった。
私は繰り返される面談で疑問に感じたことを医師に尋ねました。
面談中の医師の言葉の数々に、1ミリの希望も感じることができなかったからです。
「先生のところに来られる患者さんで、拒食症が治った方はいらっしゃるのですか?」
医師は半ば笑いながらお答えになりました。
「治らないからね、この病気は。治らないんだよ。
今、入院している子の一人は食べられるようなったけど、あの様子じゃこのあと、過食症になるな…って感じかな。
先日体重が増えて退院していった子は、今、家で大暴れしているらしい。
拒食症、摂食障害は、10年20年続く病気だからね。
治ったと思っても再発するし。本人の強い意志がないとなかなかね。
お母さん、気長にね」と。
半笑い気味で、そうお答えになったのです。
ショックでした。
「次に会うときに、少しでも体重増やしてくるんだよ」
「25kg下回っちゃったら、入院だからね。入院嫌でしょ?だったら食べなくちゃね」
そうやって、体重を増やしたその先にあるものを聞かされた気がして、怒りと不安と恐怖で心がグチャグチャになりました。
このやり方、本当に合っているの?
このままで、いいの?
それは、自分への問いかけでした。
そして、もう一度、かかりつけの小児科の先生に助けを求めたのです。
他に、他に、先生はいないのですか?
他に、信頼できる先生はいないのですか?
他に、かかることのできる病院はないのですか?
ここ以外に、考えられません。
いい先生だと思いますよ。
拒食症は、いま、すぐには治らないから。
お母さん、落ち着いてね。
そう言われました。
地方で他に病院を探そうにも、どうしたらいいのかわからない。
自分の無力さに、私はどうすることもできませんでした。