長女の拒食症克服♯4裸足で脱走
「言葉は薬にもなれば、凶器にもなる」
精神科医の斉藤茂太先生の言葉。
「言葉は凶器にもなれば、暖かい毛布にもなる」こんな言葉もありますよね。
権威ある人の言葉の影響力。
私たち親が子にかける言葉の影響力。
私たちは、誰かの言葉に傷つき、誰かの言葉に救われる。
そして、私たちもまた…。
入院先から裸足で脱走!
入院3日目。
日曜日の昼前だったと思います。
バラが大好きな娘に、バラを買って病院に向かいました。
日曜のひと気のない、静まり返った待合室に着くと、ふと、人の気配を感じました。。
そちらをよく見ると娘がいるではありませんか。
小さくなって、うつむいて、足元を見ると裸足のまま…。
男性が隣に座っています。
なにっ!?
何が起きた!?
私が彼女に気づくのとほぼ同時に、娘も私に気づき
「ママー、ママー、ごめんなさい…」と。
隣にいた男性は、私服姿の担当医師でした。
医師が饒舌にしゃべり出しました。
「いやあ、僕が当直明けで車で帰るとね、数100m先のコンビニのところに見たことある子がいるなーと思ってね。駐車場に車止めたの。そしたらゴミ箱の影にその子隠れちゃってね。気になったから、車を降りて見にいったのよ。そしたら〇〇ちゃんだったんだよ。いやあ、びっくりしたよ。見つかってよかったよ。通り過ぎたら大変なことになってたよ」
私は状況がいまひとつ飲み込めない。
小学生の子どもが、病棟から脱走するなんておかしくないですか?
それがどれだけ危険なことか、わかってるんでしょうか?
命を預かってるんですよね?
言いたいことはいろいろあったけど、気持ちがおいつかない。
「とりあえず、娘と話をさせてもらえませんか?」
裸足で震えて泣いている娘のことが気になって仕方がなかった。
今朝、電話で話をした時にはそんな状態ではなかったのに。
「ママ、あのね。お部屋に飾りたいから、お花を買ってきてほしいんだ。」
そう、言ってたのに。
震える娘と、担当医師の言動
よほどのことがあったに違いない。
泣きながら震えている娘と病室に一旦戻りました。
「〇〇ちゃん。よっぽどのことがあったんだね?
どうした?なにがあった?」
優しく娘に尋ねました。
娘は堰を切ったように、泣きながら話し出しました。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
それは、娘と医師のやりとりでした。
ここへ書くのは控えます。が、耳を疑うような内容でした。
人権を無視したようなやりとり。
それが本当なら、裸足で逃げ出すのも無理はない。
むしろ、「怖かったね。よく逃げたね。すごいよ!勇気がいったね。」
とその勇気と行動力に心が揺さぶられた。
そんなことがあれば、誰だって逃げ出したくなる。
そう、私は感じました。
「ママ、私を家に連れて帰って。ここにいても私の病気は治らない。拒食症は心の病気でもあるんでしょ?こんなの、治るわけない…。お願い、連れて帰って。」
「わかったよ。もう、一緒におうちに帰ろう。今、先生と話してくるからちょっと待っていてね。」
私は、医師の元へ向かいました。
娘の話だけではわからない。冷静に医師の話も聞かなければ。
私はそう思って、自分の怒りを鎮め、ナースステーションに向かいました。
そして、私は、さらに信じられない光景を目にするのです。
その医師が、ゴミ箱に隠れる娘のモノマネをしながら笑いながら看護師さんたちに状況を説明していたのです。「面白い子だよなー」って。
ショックでした。
涙が溢れてきました。
「なんてことを…」
退院しよう。自主退院しよう。
一刻も早くここを出よう。
大切な娘をここに預けることはできない。
その瞬間、そう決意しました。
この出来事は、わたしに大事なことを教えてくれました。
医師はこの子を治すことはできない。
私が、この子を治すんだ。
病院は、命の安全を最低限担保するために使おう。
そう思ったのでした。
今思えば、その医師にも感謝です。
あの出来事のおかげで、私に本気のスイッチがはいったのだから。
そして、そのおかげで、よい先生と巡り合うことができたのだから。
その日のうちに、家に連れ帰る
担当医師に、娘から聞いたことを尋ねたところ、概ね認めました。
が、それも意図してやったことだからとの回答。
退院しても構わないよ。
でも、必ずココにまた戻ってくることになりますよ。
他に病院なんてないのだから。
どこの病院も情報は共有するからね。
きっとまた、ここに戻ってきますよ。
医師の言葉を聞き、私たちは直ぐに病院を出ることにしました。
娘は、「ありがとう」と、ホッとした顔になりました。
「家で頑張るね。家で病気が治るようにママ、私頑張るからね!」
まだまだ「頑張る教の信者」の私に、娘は頑張る宣言をし
「ママも応援するから!一緒に頑張ろうね!」って励ましたっけ。
頑張りを示すために、帰りがけの車で娘がひと言。
「よし!お昼はミスタードーナツで、大好きなドーナツを二つ食べる!ママ、帰りにミスタードーナツに寄って♫」
私たちは病院を出て、ミスタードーナツに寄って食事をすることにしました。
ドーナツを選んで、席に着くまでよくしゃべっていた娘。
しかし、結局ふた口ほど食べて、また泣き出してしまいました。
病院で治療もできない私。
逃げ出しちゃう私。
家で頑張ろうと思ったのに、もう挫折してしまっている私。
私はダメな子。
ママ、こんな私でごめんなさい…。
あなたは、悪くない。
何も悪くない。
よく頑張ったね。
一人で怖かったね。
ママはどんなあなたも大切で大好きだよ。
そういって、彼女を抱きしめることしかできませんでした。
さあ!これから、どうするか。