元不登校の娘と振り返る夏休みの過ごし方〜勉強の遅れを取り戻す以上に大切なこと | 『公認心理師』渡辺貴子トレーナー

元不登校の娘と振り返る夏休みの過ごし方〜勉強の遅れを取り戻す以上に大切なこと

2024/07/12更新 2023/12/30投稿

みんなが休む夏休みは、

学習の遅れを取り戻すチャンスです!

お母さん、しっかり勉強させてくださいね!

娘が不登校だった小5の夏休み直前の個人懇談。

担任の先生からのアドバイスでした。

 

さらに家庭訪問もしてくださり娘にひと言。

 

夏休みは学校もないからね
しっかり勉強して、遅れを取り戻そうね!

もうすぐ夏休み。
個人懇談などで「学習の遅れ」や「規則正しい生活」について先生から助言をうけ、どうしたものかと悩む親御さんも多いのではないでしょうか。

こういった助言を「ありがたい」と思う親御さんもいらっしゃるでしょう。

また、そういったことに過度なプレッシャーを感じる親御さんやお子さんもいらっしゃるかと思います。

夏休みは子どもたちにとって特別なもの。
それは不登校の子どもたちにとっても同じ。

このコラムでは、不登校のお子さんをもつ親御さんが夏休みをどのように過ごしたらよいか。

勉強の遅れを取り戻す以上に大切なことに焦点を当ててお伝えします。

 

なぜ、夏休み期間が子どもにとって重要なのか?

娘は小3の夏休み前から、ポツポツと「行きたいくないな」と言うようになりました。
小4のころは五月雨登校、小5ではほぼ完全不登校に。

あの頃の娘にとっての夏休み。
「みんなも休んでいる」ただそれだけで心が少しだけ軽くなり、ホッとしたそうです。

「ギリギリの状態で登校していた頃は、夏休みはただただ堂々と休めること、毎日の葛藤から解放されたことにホッとした。
完全不登校のころは自分が周りから取り残されているという感覚から、夏休みに一時的でも離れることができ心が楽になれた」

そう、娘が教えてくれました。

だけど、そんなときでさえ
「先生も、ママも
『そんな夏休みだからこそ!あれをしなさい、これをしなさい。今しないと、みんなに追いつけないよ!
規則正しい生活できないと、2学期から登校できないよ!』って。
学校を休んでる私は普通の夏休みを楽しめないんだ…。楽しんじゃダメなんだ…」


そう、思ったそうです。(胸が痛い…)

不登校中の子どもたちにだって、夏休みは特別です。

本来ならワクワクしたり解放的な気分になる夏休みを、「学校へ行っていない子どもたち」はどんな思いで過ごしているのでしょうか?

あなたのお子さんは、いったいどのような気持ちで過ごしているのでしょうか。

夏休みにおける不登校の子どもの心理と感情                             

1.安心とリラックス

みんなが休むので、不登校ということへの罪悪感が減り心に余裕ができます。
兄弟姉妹の目を気にしていたけれど、みんなもお休みです。
毎日下校時に届けてもらっていた、宿題のプリントや連絡ノートが一時的に止みます。
「今日欠席します」と学校に連絡(毎日連絡しなければならない学校もあります)する苦痛もなくなります。
「今日はどうするの?」「やっぱり、今日もダメか…」という親からの有言無言のプレッシャーから解放されます。親のがっかりした顔を見なくてもいいんです。

子どもたちは、学校を休んでいるあいだ(不登校中)どのように感じているのでしょうか。

文部科学省の不登校の小中学生を対象にした調査では、「学校を休んでいることの安心や不安」について
小学生の70%、中学生の69%が「ほっとした・楽な気持ちだった」と回答しています。
休む選択をし、実際に休んだことで「ほっとした・楽な気持ちになった」背景に、それまでの苦しさや悩みの深さが伺えます。

と同時に、

小学生の64%、中学生の72%が「学校の同級生などが自分をどう思っているかが不安だった」と回答。
「勉強の遅れに対する不安があった」が「あてはまる」「少しあてはまる」を合わせて約7割(小学生70%、中学生69%)

学校を休む。その前も後も不安にさらされていることがわかります。

参考:不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書

子どもたちは不安や焦燥感、孤独や疎外感、罪悪感を感じている。

夏休みは学校全体が休みになる。
それだけで、不安や焦燥感、孤独や疎外感、罪悪感が弱まり、リラックスや安心感を感じることができるんです。

2.それでも感じる不安と心配

夏休み前半に感じていたほっとした気分も、お盆を過ぎる頃には再び学校へ戻ることへの不安へと変わっていきます。

また、学習の遅れや成績についての心配、受験や将来のことなどへの不安。
「いつまでも変われない」「進展しない」。何も変われないまま時間を浪費していると感じる焦り。

これらの不安や心配は、夏休みであってもなくても感じているお子さんは多いでしょう。
たとえ、わたしたち親にはそうは見えないとしても。

3.そんな中でも感じたい喜びや楽しさ

自分の好きなことに夢中になったり、リラックスして家族と過ごせる穏やかな気持ちになる。

4.疲れと倦怠感

ぎりぎりで頑張って通っていた時期の心身は疲れています。
心はエネルギーが切れている状態かもしれません。
また、夏休み前から不登校が続いていたとしても心は疲れ切っている場合があります。
お子さんそれぞれの心理的テーマは、夏休み中も続くため心が疲弊することもあるでしょう。
自分自身の感情と思考との葛藤や、親との対立や衝突なども起きやすくなることも考えられます。

お子さん一人ひとりの状況や性格によっても異なりますが、夏休み中の不登校の子どもが感じやすい心理や感情、背景などにはこれらのものが考えられます。

夏休みは、親にとっては長いものです。
つい、子どもにあれこれ言いたくなります。
勉強の遅れも気になります。
生活態度も気になります。
このままでは…と、未来のことも不安になります。

どんなに親から正しいことやこうするべきだと言っても伝わらないのは、子どもの気持ち、考え、背景にたいする寄り添いがないから。

親であるわたしたちが不登校の子どもがいてつらい時、まわりの誰かに「この気持ちわかってほしい」と思うのと同じように、子どもたちもわかってほしいのです。
ただ不安、苛立ち、葛藤、楽しみ、喜びに、寄り添ってほしいのです。

それは、本当に役に立つのか?

娘が不登校になったとき、毎日のように先生やお友だちが宿題のプリントやお手紙を家に届けてくれました。下校時刻に玄関チャイムがなるたびに、娘の表情は強張り全身に力が入っていました。

「日々の宿題プリントやドリルの数々、明日の予定が書かれた連絡ノートは、できない自分を突きつけられるようだった」

不登校だったあの頃を振り返り、彼女はそう教えてくれます。

 

そして次第に、連絡ノートにもプリントにも目を通さなくなっていきました。

そんな経緯をご存知の担任の先生。

「だからこそです、お母さん!

学校のストレスがない『夏休み』だからこそです!

みんなが休んでるときにこそ、やらせてください!

生活習慣もしっかり整えてください!」

先生はきっと、

「学習の遅れが学校復帰をさらに遠ざけてしまうのでは」

そう考えくてださったのだと思います。

今こそ!
今だから!
今、やらなくちゃ!

 

それが本当に役に立つのなら、とりいれてみるのがいいと思います。

私自身もそう考え、次女に勉強させようとしたこともあります。

でも、我が家の場合は、それでは上手くはいかなかった。

「今こそ!今やらなくちゃ!」

やっと夏休みにはいり、

娘と母で不登校を乗り越え、

過去を振り返ってみて

私たち母娘が言えることは

何して楽しむ?
どんなことして、楽しみたい?

自由に楽しんでいいんです。
存分にやりたいことを好きなだけやったっていいんです。

心が膨らめば
放っておいても
あとは子どもが自ら動き出すから。

大丈夫なんです。

「いつも家でやりたい放題してるし…」

そのように見えるお子さんも
何かを感じているかもしれません。

もしかしたら、そんな時間が必要なのかもしれません。

だからね、
何も気兼ねしなくていい夏休み

本気で楽しんでいいんじゃないかな、って思います。

安心できるお休み期間であるはずなのに

お母さんが「お勉強の遅れ」に気を取られていると
子どもに伝染します。

楽しんじゃだめなんだ…。
学校へ行ってない自分は

楽しむことは許されないだ…。

夏休みでさえも

自分を責めながら生活することになります。

たとえ親の目に、のらりくらり過ごしていると見えたとしても、子どもの心の中ではできない自分を責めているということもあります。

不安でいっぱいの場合もあるのです。

だから…

せっかくのお休み
心も体も学校から離れて多いに満喫していいんです。

 

▶︎▶︎▶︎拒食症、不登校克服「母親だからできることがある」

▶︎▶︎▶︎拒食症、不登校克服「誰のために話を聴くのか?」

そして、お母さんも…。

どうか、ゆっくりと…。

お母さんも楽しんでいいんだよ。

「学校」というシバリから解放されるお休み期間は、ひょっとしたらママの心もいつもより穏やかでいられるかもしれません。

そんな時を大切に過ごしてください。

▶︎▶︎▶︎【拒食症・不登校克服】もしも、まるまる肯定されたらどうですか?

 

どちらの時間の過ごし方も、私たちは選ぶことができるんです。

時間は命です。

同じ命の時間を「何に意識を向けて過ごすのか?」私たちは今この瞬間から選ぶことができるのです。

子どもは、心がじゅうぶんにみたされたら
放っておいても動き出すんです。

そのときに、

お母さんにできるサポートがあります。

みんなが休んでいるときが差を縮めるチャンス…。
学校の先生が言うように、

そう思うかもしれません。

心のエネルギーが枯渇している子どもを叱咤激励して

何かを詰め込んで

娘は、小5の11月に学校復帰しました。
掛け算九九も忘れかけていました。

けれど、動き出した娘にとって
九九を忘れかけていることも、

漢字が書けないことも、

リコーダーが吹けないことも


学校復帰に際して、なんのマイナス要素にもならなかった

そう、娘は教えてくれます。

だって、心がエネルギー満タン状態だからだと。

もちろん、登校してからも

「私だけできない…。」

そんな辛さもあったそうです。

けれど、

乗り越えるためのエネルギーをいっぱいに満たした彼女は

ようになったそうです。

私が驚くほど、成長していた…。

そして小6の春、

自分で勝手に公文に行くことに決め、
先生と相談し小2レベルからスタートして

小6の2学期には追いついていた。

不登校というこの時間が、もしも神さまから与えられた尊い時間だとしたら

表面的な勉強云々を越えて

本来の自分を取り戻し、


その先の課題に自分で向き合うことが

できるようになります。

一つひとつ自分で課題や試練をクリアしていくことが
本人の大きな自信に繋がり
ますます心がしなやかに成長していくでしょう。

今が人生のいちプロセスだとしたら、このさきにもたくさんの試練があります。

勉強も生活態度改善も、今すぐの答え。
親としては、すぐに本人に解決してほしいことかもしれない。

けれど、今、子どもたちが向き合っている試練には
勉強や生活態度をこえて学べる宝がたくさん詰まっています。

試練を乗り越えるプロセスで、子どもたちが成長していくのを
寄り添い、見守り、サポートしませんか?

そのために私たち親が、まずやること。

気持ち的にも余裕がある夏休みはそのチャンスです。

 

今回のお話に登場した娘は、現在大学4年生。
先日、本人が「ここだ!」と思える企業様から内定をいただいていました。
就活としては長い活動だったと思います。
その間の、向き合う姿に彼女のしなやかさや芯を感じる日々でした。

その姿に、親のわたしが教えられることは、とても多かったです。

最後まで読んで下さって、ありがとうございます。